私なりの室内楽のイメージをご紹介します。一言でいえば、「重奏の魅力」です。
重奏では、一つのパートは一人で演奏されるために、音楽家としての力量を各パート毎に発揮することができます。音楽的であれば好きな音色で、好きな音量で、好きな表情で自由に表現することが許されます。また自分のパートについて、「ここは伴奏だ」と解釈するか「ここはソロだ」と解釈する自由もあります。どんなに精緻なアンサンブルでも、重奏としての魅力を失っていれば室内楽とはいえなくなるとおもいます。
このような重奏の機能が最も良く発揮できる曲が室内楽としての名曲でしょうし、重奏の機能を最大限に表現した演奏が室内楽の名演であるとおもいます。
同じヴァイオリンとピアノで演奏されても、ベートーヴェンのロマンスは室内楽というイメージではありません。でもヴァイオリンソナタは、ヴァイオリン付きのピアノソナタとして書かれていても室内楽のイメージです。モーツァルトのEine kleine nacht Musik もなぜか室内楽的ではありません。モーツアルトのト短調弦楽五重奏はまさに室内楽のイメージです。
重奏の魅力に目覚めたとき、室内楽のイメージが確立するとおもいますが、如何でしょう。
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